『新版 図説種の起源』 チャールズ・ダーウィン著 リチャード・ダーキー編 吉岡晶子訳

東京書籍 1997 部分読み A5 ハードカバー B \4800 *****図書館 03/9/29

大著『種の起源』の簡約版に、図説と付記をつけた新版。読みやすくなったと編者などは述べるが、果たしてそうか。面白がり方の幅が少なくなった分、読みにくくなった面も少なくないと思う。雑多な個別事例こそが一般人には面白いのではなかろうか。

とはいえ、ダーウィンの、現在においては誤りとされる所も丁寧に補足してくれているのは大変助かる。中でも「獲得形質は遺伝しない」ということは重要である。どうもこのことは通俗的に間違えられているような気がする。要は、肉体労働者の太い腕は子孫に受け継がれるか、という問題。現在では獲得形質は遺伝しないことがわかっている。わかっているはずなのであるが、我々は「キリンは高いところの葉を食べるために首が長くなった」と思っていないだろうか?「キツツキのくちばしは木を叩いている内に長くなった」と教わってないだろうか。これらは誤りである。突然変異の結果、環境により適した種・変種が子孫を残すことに成功した、というのが正しく、ダーウィンの理論もこれが中心である。高いところの葉を食べるために首が長くなったのではなく、たまたま首が長い個体がより生存しやすかった、ということなのだ。

それにしてもダーウィンの博識ぶりには舌を巻く。発表当時のさまざまな異論にもいちいち反論・補足を付け加える丁寧さ。『種の起源』は一人の人間がなし得る最高の学問的業績だろう。

図説とともにある補も、「トリビア」に富む。曰く、三毛猫には雌しかいない、など。じっくりと時間をかけて読みたい、というかそうでもしないと読めない。リチャード・リーキーの解説を読むだけでもあらましはわかるので、進化を語るならこれくらい把握しておかないと恥ずかしいだろう。そして、ドーキンスの『利己的遺伝子』を読む際にもこの把握は大変役に立つ。まず種の起源、それから利己的遺伝子、という流れで読むのがよいと思う。

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