『利己的な遺伝子』 リチャード・ドーキンス 日高敏隆ほか訳

紀伊國屋書店 1991(1980) 通読 A6 ハードカバー A- 2800 *****図書館 03/08/01-9

1.人はなぜいるのか 2.自己複製子 3.不滅のコイル 4.遺伝子機械 5.攻撃--安定性と利己的機械 6.遺伝子道 7.家族計画 8.世代間の争い 9.雄と雌の争い 10.僕の背中を掻いておくれ、お返しに背中を踏みつけてやろう 11.ミーム--新登場の自己複製子 12.気のいい奴が一番になる 13.遺伝子の長い腕

誤読がはびこっているらしい、ということで手に取ってみた。一読、なるほど、誤読がはびこっている。「人間は遺伝子に操られている」なんてことはどこにも書いていない。それに、生物学の本かと思ったらゲーム理論の本だった、というのも驚きである。

有利な「遺伝子」が結局数を増していき、その「状況」の中で有利でない遺伝子が淘汰されていくことが、ゲーム理論によって解明されていく。一見「利他的」に見える行動は、「状況」の中で最大限利己的に振る舞った結果である。これが全編通してのテーマであり、くどいくらいに繰り返される。

『銃・病原菌・鉄』と同じく、この本にあることで全ての問題を解決できるということではない(はず)。そう誤解すると「人間が遺伝子に操られてるなんて!」と読み誤る。そうではない。これが全てではない、だが、相当に出来のいい「モデル」なのである。多くのことが説明できてしまうのである。だから、センセーショナルなのであって、「遺伝子が人間を操っている」からセンセーショナルなのではない。この辺を勘違いして、読みもせずに「利己的遺伝試論」批判をする輩の多い事よ。

構成上の難点として、一つの章の中で、どう見てもガラリと論点が変わっているのに、段落をつけるだけで、1行あけるとか罫線を入れるとか、そういうパラグラフ分けがなされていないのはどういうことか?非常に読みにくい。頭の中を切り替えるのに無用な時間がかかる。翻訳時の問題か、原文の問題かわからないが、減点対象。たとえ原文がこうであったとしても、編集者はこういうことをなんとかすべきではないのか?

もうひとつのマイナス要素。くどい。『銃・病原菌・鉄』でも感じたある種のくどさ。これでもかこれでもかと繰り返される主題。中盤の中だるみは否めない。序盤数章までは、連続して読めるが、中盤以降章が独立した話になっていくのも、読む苦労を増す。だから具体例と具体的な反批判になっている補注が面白い。

と、いうことでA-とする。とは言っても基礎教養ですしね。読まないで誤爆、だけは避けたいところ。必読。後ろの方から読んでいった方が、具体例→結論の流れになって読みやすくなるだろう。あるいは大胆に読み飛ばし、後に読み返す、という作業が必要になる。少なくとも、私の読書レベルでは。03/8/9

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