『洞窟探検入門』 エリック・ジッリ 本多力訳

白水社文庫クセジュ 2003/5 仏版1998 通読 新書 新書 B 951+税 E図書館 2006/3/10

洞窟探検の困難とそれを乗り越えるテクニック--例えば照明をどうやってとるか、竪穴をどのように上昇・下降するか、水没したところをどう乗り越えるか--を新書にまとめた本である。当たり前だが、これを読んだからといって洞窟探検に出かけられるようになる気は全くしない。著者もまず地元のクラブに入れといっている。つまりこの本は技術伝授の本ではなく、洞窟探検の困難とその解決を通して、洞窟探検の醍醐味を伝える本である。そしてそれは成功している。

古今のRPGで洞窟は取り上げられ、その中にはゴブリンやオークや吸血コウモリやドラゴンが棲んでいるところとされた。そのイメージはある意味正しいのかも知れない。真の暗闇の中で、未知との遭遇を期待する気分というのは実際に見てみないとわからないし、こういう本を読まないと「洞窟」というものがどこまでも抽象的な感覚にとどまってしまう。地下迷宮はともかくとして、洞窟は浸食によって出来た地下世界故に、人間の通行の都合は往々にして無視されている。這いつくばって乗り越えなければならないところもあるし、深い竪穴をワイヤー頼りに下降しなければならないこともある。そんな洞窟は、RPGには出てこない。一方RPGのイメージと重なるところは、洞窟は狭い通路ばかりでなく大広間のようなスペースも存在するというところか。

はじめて知ったのは、今なお洞窟探検で主力の照明がアセチレンランプだということだ。ヘルメットに文字通り火を灯しているのである。てっきり電池ランプだと思っていたが、光線が直線的でしかも光量が全く不足で補助光源としてしか使えないらしい。

あと山岳映画で命綱をY字に絶壁に打ち付けているのは、もし一本が外れた時にショックを近い場所で吸収するためだったのね。それがさらに多重化されて登攀者の安全を確保している。

「原住民が水浴びをするなと言った所で水浴びをするとワニやフカの餌食となるであろう」

「ありがちな事故の原因は、ガス中毒である。・・・最初の徴候は単なる息切れで、訓練不足や、疲れからくるものと考えられやすい。呼吸がだんだんと早くなり、肌に赤みがさし、顔色は白くなる。意識を失い、そしてガスの量が多いと、死亡する。空気の循環がよいところへ戻れば、症状は消える。」「幸い、アセチレンランプは有力な見方となる。・・・酸素が欠乏すると炎が赤くなり、煙を出す。呼吸が出来なくなるくらいまでは、燃え続けている。」

「洞窟における死亡事故の30パーセントは落下によるものである。機材のせいであることはめったにない。ほとんどの自己は不注意と軽率な過失によるものである。」

こういう話に私は心ときめくのである。

というわけで、フィールドが仮想世界であれ現実世界であれ、全ての冒険者にお勧めの一冊。ゲームマスターにも必携の一冊。

洞窟探検入門
洞窟探検入門
posted with 簡単リンクくん at 2006. 3.17
エリック・ジッリ著 / 本多 力訳
白水社 (2003.3)
通常2-3日以内に発送します。

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