『趣都の誕生 萌える都市アキハバラ』 森川嘉一郎

幻冬舎 2003 通読 A5 ハードカバー A \1500 A区図書館 04/7/16

秋葉原の都市論、建築論。腐れ建築家の腐れ文章ではない。ちゃんとした独自の視点と、まともな日本語で書かれた良書。

著者は秋葉原を趣都と言う。マイナーな人格の都市的な偏在を表現した言葉である。日本中の都市が個性を失い、均質化される中で、秋葉原は新たな個性を獲得し始めている。オタクの聖地としてともすれば唾棄、蔑視の対象ともなりがちな秋葉原の昨今の風貌を、プラスの視点で捉えなおしているところが面白い。

まあ所々論理の飛躍みたいなものは感じられる。例えば、「オタク趣味を特徴づけるアニメ絵の幼女的なキャラクターが日本で育まれたことには、日米の文化的ヒエラルキーという巨大な戦後的構造と、手塚という絶大な影響力を持った作家が介在していたのである」(P116)というのは、ちょっと本当かなあ?と思う。一応筋は通るけれども、これが真実かどうかは自信が持てない。まあまるっきり説得力がないというわけでもないのでそれは前提として読み進めるのだが。

「この支配的文化に対する防衛的態度ゆえに、オタクは必然的にマイノリティである。あたかも民族が自決するように彼らが秋葉原へと集中したことは、都市史的な文脈から眺めれば、中華街やイタリア人街といった、エスニック・コミュニティの形成に近い。・・・秋葉原の変化はコミュニティ・オブ・インタレスト、すなわち趣味の構造による集合である。インターネットの場所(サイト)の成り立ちを、現実の都市が模倣し始めているのである。そしてこの点が、決定的に新しい」(P235)

なるほど、そういうことだったのか!ちょっと見方を変えてみれば、昨今の秋葉原は予想できなかった未来都市の風貌を帯びる。

本書の結論は上記引用文に尽きているはず。それにたどり着くために本書では、高度経済成長期の建築論や、東京の都市論、航空機デザインの変遷、アニメ絵の成立、アニメ好きとパソコン好きの類縁関係、などなどが章ごとに考察されている。いちいち解説するのは面倒なので、各自読んでくれ。

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