『数字オンチの諸君!』 ジョン・アレン・パウロス著 野本陽代

草思社 1990 通読 A5 ハードカバー B \1400 A区図書館 04/7/16

同著者の『確率で言えば』が腐れ訳で読めたものじゃなかったのに対し、こちらはいくらかまともな訳。まあ特別いいとまではいわないが。

書いてある内容も『確率でいえば』と重複するものも多い。「偶然というものは案外と起こりうるものである」「偶然に支配されているだけの現象に意味を持たせようとする傾向は時には間違っている」などなど。

卑近な例が特に面白い。上司と部下がいて、上司がある時いい仕事を褒めたところ、その次の仕事はいまいちだった。よくない仕事で部下を叱ったところ、その次の仕事は向上した。これは褒める・叱るという行為によってもたらされたと考えるよりは、ただ単に「平均への回帰」で説明できると著者は言う。特別よい仕事と特別よくない仕事、どちらも確率的には起こりがたいことであり、その次の仕事はただ単にもっとも起こりやすい平均的な仕事の出来に回帰しただけなのである。

このような、現実と数学的論証が背反する例を列挙した本なのだが、なかなか警抜だと思った一文としては、「数に対してすぐれたセンスを持ち、あまりふるい分けをしない人でも、偶然の一致がますます増えていることに気づいているだろう。これは、人間が作り出した約束事の数が多く、それらが複雑なためである。・・・そして彼らは、何もないところに、偶然の一致しかないところに、何か関係があり、力が働いていると仮定するようになったのである」 なるほどこれはそういえるだろう。時々マスコミは???な議論を展開するが、その多くが「印象」を語ったものである。そしてその「印象」なるものは結局、人間が作り出した約束事に基づくものである。時にはこの約束事に沿って統計までもがゆがめられて作られ、解釈される。

著者はこういう世の中をなんとかしたいとジタバタしているわけであるが、いやはや、15年ばかりたっても何も改善が見られませんな。

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