『世界の軍事要塞』 斎木伸生

発行:アリアドネ企画 発売:三修社 2002 通読 B6 ソフトカバー C \2200+税 A区立図書館 04/9/30

誰だこんな本を図書館に納入させた奴は。借りちまったじゃねーか。希望者と俺と、他に誰が借りる?

というわけで、主に近代要塞を扱った本。内容は、エバン・エマール要塞、リェージュ、ドーバー城、カレー、ノルマンディ要塞、ボーダ要塞、ヴェステルプラッテ、ヴォルフシャンツェ、マンネルヘイムライン、クイバサーリ、サルパライン、クロンシュタット要塞島、オデッサ要塞、セバストポリ。

物足りないというのが正直なところだ。対象への迫り方が深み、範囲ともに甘いのが問題だ。紙幅の都合というのもあるだろうが、それなら遠慮せず図鑑サイズでやって欲しかったところだ。こんな小さい本でもいいお値段だし、買う奴もそんなにいないだろうし。この本の構成では、満足できる人がいないはずなのである。真性ミリオタはまず満足しない。深みが足りないから。戦争遺跡に興味のある旅行者の役にも立たない。アクセス方法を省いているから。戦争に全く興味のない人には、もちろん面白くもない。

困ったことに、近代要塞の性格が、この本の中途半端さを増幅させる。だって、どれもこれも殆ど役に立ってないんだもの!どれもこれも仰々しい武装、重装甲でいかにも難攻不落を誇示していながら、あっけなく陥落する。空挺部隊が背後から迫り、あるいは艦砲射撃・空爆を受け、あるいは一部を突破され、迂回され、要塞は無力化されていく。役に立ったとしても、せいぜい敵軍の遅滞に過ぎず、敵の侵入を跳ね返すことはできない。例外はある。冬戦争でフィンランド軍が善戦したマンネルヘイムラインがそうだ。だがこれは本文にもあるとおり、「要塞」というよりは、地形を生かした深みのある野戦構築物の連続といったものだ。難攻不落の要塞というイメージとは遠い。むしろクルスクのソ連軍防衛ラインに近いのではないか。

そういうことだから、戦史解説やイラストによる要塞構造解説にも今ひとつノリきれない。やるならもっとマニアックに、架空戦記を書くノリで、実現しなかった要塞を巡る死闘を空想させるように、微にいり細をうがった方法で、要塞の全体構造を解説すべきではなかったか。あるいは、せっかくそれ系のイラストレーターを使ったのだから、戦場の全体構造をつかめるようなイラストをも描かせるべきではなかったか。誤字脱字の類もいただけない。「沿岸放題」はまあ許すとして、不撓不屈にわざわざ「ふぎょうふくつ」などと誤ルビをふるのはよろしくない。

この本で得たトリビアとしては、冬戦争当時のフィンランドには日本軍兵器も送られていたということか。三八式歩兵銃はもちろん、120ミリ沿岸砲が大活躍したそうだ。

世界の軍事要塞
斎木 伸生著
アリアドネ企画 (2002.9)
通常2-3日以内に発送します。

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