『住宅購入学入門 いま、何を買わないか』 長嶋 修

講談社+α新書 2005/6/20 通読 新書 新書 C+ \781+税 自 06/2/1

マンションを買おうとは思っていなかったし、今も思っていない。家賃を払い続けるより買った方が得、という論法にはどこか胡散臭いものがあることには何となく気づいていた。莫大な負債を抱えることの問題くらいならわかるが、それ以上に何かおかしな事があるような気がしていた。それを知りたくて本書を手に取った。

持ち家を欲する人の理由が、借家住まいの権利の不安だそうである。これに対し著者は「高齢化社会で老人に家を貸さないで大家がやっていけるわけないでしょ」と一刀両断。ごもっともです。「2050年の世の中を想像してみてください。1955年に今の2005年の姿を想像できたと思いますか?「50年後の社会を現在の延長線で考えること自体、無理があるといえるでしょう」・・・歴史学専攻なのに、納得してしまった。未来は予測不可能、と抽象的には理解していたつもりだったが、こと自分が生きている生活の中でその考えを実践するというのは思いつかなかった。我々や、30代の人々が老年期を迎える時は、今とは全く違った世の中になっている・・・大抵の人々が、老いを明日の問題であるかのように考えて住宅購入に踏み切り、失敗する。さらに著者は指摘する、30代でマンションを建てた人が50年生きたら、間違いなく建て替え問題に直面する。60〜80代で1000万単位の出費がありうる・・・

「低金利は買い時」が嘘だと著者は言い切る。住宅ローンの支払いはフロー、住宅の資産価値はストック。住宅価格は例えば次のように決まる。

住宅の販売価格の決まり方
・金利2%:700万+3000万=3700万
・金利4%:700万+2320万=3020万

になり、特定のグレードの住宅を購入する人が、借りられる額と頭金を足したものが販売価格になるとすると、つまり、金利が上がると、低金利の時に買った住宅の資産価値が下がる、と著者は解説する。金利が上がると、住宅の資産価値は下がるが、ローンの額は変わらない。その時転勤・リストラ・減給などが起こったとしたら・・?損をすることが悪いとは言い切れないが、不測の事態が起こった時にも無理なく対処できるような住宅を買わないと失敗する。

第四章、マンションは近所づきあいが大事、というのもうならされる。手入れをケチっているとあっという間に老朽化しますよー管理組合大事デスよー

第五章以下が、いまいちである。住宅の資産価値が、日本では新築に住み始めた瞬間から「中古」となり、下がる一方だということが日本の住宅市場のいびつさを生んでいるという視点はいいのだが、著者が主張するように、選択によって、それを消費者がどうこうしようというのは、ちょっとたかだか数十年の生を得ているに過ぎない我々には厳しいな。勝ち組・負け組で発想するのが良くない、というのもわかるけれど、不動産屋が勝つか、それ以外が勝つか、という勝負はあるよな。

言っていることはもっともなんだ、住宅の代替わり周期が、欧米の半分あるいは三分の一くらいの40年という異常な国、日本。住宅への投資周期は、英73仏59独56米38日23年という有様。まあ健全ではないよな。30年で建て替えなければならないコンクリートの建物って何だ?そういういびつな不動産や建物の回し方をしてきたのが、これまでの日本の経済だった。よくわかる。でも、本書の後半部分はいかにも中途半端に欠陥住宅の実例を挙げたりして、読者の興味、すなわち、自分がどうやったら損をしないか、ということに答えていない。一章から三章まではかなりいい線行っていたのに。

まあ、数千万の買い物の前に800円かそこらの買い物は安いものであり、はやる気持ちや、知り合いが購入して焦っているような心を静めるには、かなりいい本。世の中そうそううまくいかねえな、と再確認できる。でも、経済学的にもっと知りたい、という気持ちを抑えられなくなる。まあそれはそれでいいことだけれども。

住宅購入学入門いま、何を買わないか
長嶋 修〔著〕
講談社 (2005.6)
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