『自衛隊の誕生』 増田弘

中公新書 2004 流し読み 新書 ソフトカバー C+ \861 自 05/1/20-27

ガチで準専門書。素人にはお勧めできない。素人は「はじめに」と「おわりに」だけを読んでおくだけにとどめるのが賢明。新しい史料を用いた意欲的な研究レポートだということはひしひしと伝わってくるので、それ系の研究をしたい大学生などにはお勧め。

文章もきれいにまとまっていて、読みにくくもなく、わかりにくくもなく、でも面白くない。というのは、著者の興味関心がどこまでも学者趣味にとどまるものであって、門外漢としての一般読者を置いてけぼりだからである。問題設定がいかにも学者風に、「自衛隊成立の過程」ってなもんだから、素人は自分の身にひきつけて考えられんよ。それがいい、というのも分かる。安易に読者に媚びて、専門分野の大家の手になる本が、くだらない本になってしまうこともあるから。でもこの本はハードすぎだろ。現在・未来への展望いっさい抜きに、淡々と1950年代のことを語られても。とはいえ、そういうのも新書の役割の一つではあるので、許す。が、高い点はあげられない。

朝鮮戦争を契機として、米軍の穴を埋めるために警察予備隊が発足した、という従来の通説を覆すのがこの本の目的である。その成立過程もまた、アメリカにいわれてやむなく作ったという感じでもなく、「逆コース」を目論む日本政府が積極的に推進したというわけでもなく、非常に微妙なあやが絡み合いつつ自衛隊が完成していく様は、この本の醍醐味ではあるかもしれない。例えば米軍は陸上兵力30万を要求するが、吉田が峻拒し、交渉の末落ち着いていく様とか。陸自と異なり海自はむしろ旧海軍関係者が積極的に米軍関係者や海上保安庁の人間を巻き込んで創立された様とか。吉田茂の交渉力というのもたいしたものである。自衛軍を持つのはいいとしても財政負担をどうするか世論をどうするか、過大な要求には抵抗し、財政負担もアメリカを巻き込んでいく。もちろんこれらは吉田一人の手柄でもないのだろうけど、少なくとも日本政府のすごみが伝わってくる。

脚注は全部英語文献にリンクしていて、対象読者を暗に示しているといえるかもしれない、専門家予備軍の方々は是非。

 

戻る ジャンル別分類へ戻る

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送