『ナチ独裁下の子どもたち ヒトラー・ユーゲント体制』 原田一美

講談社選書メチエ 1999/6/10 通読 A5 ソフトカバー  B+ 1600 *****図書館 03/06/30-07-01

1. ワイマル期のヒトラー・ユーゲント 2.『国家青少年』への道 3.教会との闘争 4.学校教育への負担 5.反抗する若者たち 6.戦時下のヒトラー・ユーゲント エピローグ、参考文献、あとがき、索引

ネタのコアさ加減から見て、準専門書と予想したが、案の定。ただ、紀要風の学術論文を選書用に書き直したらしく、この手のものにしては読みやすい。ただ、構成上時系列的な把握がしにくかった。ワンダーフォーゲル運動というものがナチズムとも深く関わっているという話がようやく少し分かった。ヒトラーユーゲントは、「同盟青年」などといった青少年団体の野外活動などを取り入れつつ、教会団体やその他の青少年団体を圧迫し、糾合していく。ヒトラー・ユーゲントが、ナチ上層部の狙ったナチ的人間の育成とは関係なく、その野外活動などを楽しんだ青少年は決して少なくはなかったであろう事。特に労働者階級の子どもたち、そして女性たちが、同じ「青少年」として活動に参加できるメリットがあった。低所得者層の子どもは、貧しさゆえに体験できなかったレジャーを大変気に入った。また女子においては、ナチの求める女性像--将来の母--と背反しうるにもかかわらず、スポーツが奨励され、女子は「解放感」を味わった。これは、「女」ということより「青少年」というくくりが適用された事による。

ヒトラー・ユーゲントが学校の教育活動に重大な支障を来す。週二日の午後はヒトラー・ユーゲント活動に当てられたりする。教師の権威は貶められ、労働者の基礎的素養の低下が嘆かれるようになる。そして戦争期にはユーゲント活動への反抗、逸脱が目立ってくるようになる。戦争末期にはユーゲントが動員され、多大な犠牲を払う。

ナチ=ファシズム=悪というよくある思考停止から離れた専門書ならではのおもしろみ。ユーゲント活動の正負の側面をバランス良く描いている。アカデミズムであるゆえに、著者は「このころのドイツと現在の日本を比べちゃだめよ」というが、やっぱり私は比べたくなる。だってヒトラー・ユーゲント活動って、「反つめこみ教育」であるし、「個性を伸ばす教育」だもの。その挙げ句に学級崩壊、商工会議所は労働者としての素養低下を嘆く、という構図は繰り返されないと言えるだろうか?極端な例として参考に値すると思うのだが。

また、キャンプ、たき火、行軍、音楽、こうしたなんて言うんだろ、アウトドア活動が団体リーダーの資質によって質が高められ、参加員に大きな充実感を与えるということも興味深い。これからの日本で金になるビジネスだと思う。

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