『日本の軍事システム 自衛隊装備の問題点』 江畑謙介

講談社現代新書 2001 通読 新書 ソフトカバー  B \680 A区立図書館 04/7/27

いい加減氏の著作も飽きてきた気もするが、まだ読んでいる。

タイトルがよくない。本書のテーマを十分に表していない。それはあとがきにある。

「武器を含む装備には各種目的の為いろいろな種類があるわけではなく、その調達に当たっては非常に多岐にわたる複雑な要素・条件を総合的に判断しなければならない。繰り返すが、これらの自衛隊の装備はわれわれ国民の税金で購入している、われわれの財産である。それがどんなもので、どのように買われ、使われているのかに、日本国民はもっと関心を持ってしかるべきだろう」

というわけで、自衛隊・防衛庁批判の書なのであるが、旧左翼の如き、自衛隊は存在自体が悪、戦闘機を買う金で学校を作れ、などといった愚劣な議論は排される。せっかく買うのなら、使えるものを安く手に入れ、有効に防衛力・抑止力としましょう、ということである。

そういった観点から、自衛隊装備がズバズバ斬られていく。九○式戦車は例えば新潟有事には富士山麓から関越自動車道を通って行く以外に方法はない、が、無理だろそれ。そんな戦車はいくら強くても抑止力は発生しない。建造予定ヘリ空母は何故全通甲板にしないのか。空母保有などと政争の具にしていないで税金をちゃんと使え、ヘリ空母は災害支援にも有効だ。水陸両用飛行艇US-1は世界に類似の機体が存在しない貴重なものであるが、これを武器輸出三原則に縛られて輸出しないのはいかがなものか。等々、メジャーな兵器をあっさり「使えない・使いにくい」とばっさり、地味な兵器を絶賛、と江畑節絶好調。そんななかで江畑氏イチオシの自衛隊装備は、輸送艦「おおすみ」である。災害支援のため仮設住宅をトルコまでわずか27日で届けたというエピソードが、いくらか誇らしげに書かれている。

「自衛隊の装備は国民の共有財産」 よく考えてみれば当たり前のこの言葉が新鮮に響いてしまう今までの日本の状況はなんだったのだろうか。ヘリ空母にしても、くだらないイメージだけのために、わざわざ使えないものが作られようとしている。税金の無駄遣いだからもっとちゃんと作れ、とこれを批判する者を、私は著者以外に知らない。その上代案まで示唆できる者となると、恐らく日本には著者をおいて他にない。

ミリオタに限られないであろう、新書のマーケットやターゲットをよく見据えた良書。

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