『これでわかった 世界の新秩序と軍事力 冷戦後の軍事戦略はどうなっているのか』 江畑謙介

PHP研究所 1992 通読 A5 ハードカバー A \1500 *****図書館 03/9/11

1.兵器市場と兵器の流れ 2.核兵器の価値 3.組織としての軍隊 4.「質」からの軍事力考察 5.技術革新と兵器開発 6.軍縮と世界経済 7.兵器輸出/兵器移転と外交 8.日本の軍事力考察 9.新秩序と軍事力 10.「北方領土」の軍事的見方

江畑謙介の著作にしてはタイトルがいやに間抜けだな、と思ったが、PHPの「これでわかったシリーズ」ということのようである。帯に江畑謙介氏の写真、「おおっ髪が多い!」と驚く。

さて、1992年の著作ということで古い本である。だが、内容の古びは類似書に比べて極めて少ない。著者の才覚のなせる業である。最近話題の「有事法制」の問題についても述べられていて、先見の明には恐れ入る。非常にわかりやすいが、簡潔な中にも重要な指摘を含めていて、すらすら読めてためになる本。

本書が古びていないと私が言う根拠を例示しておこう。

「核兵器保有国に対しては、あるいは核兵器保有国の発言に対しては、ある程度『尊重せねばならない』という傾向、ないしは価値観が世界には厳然として存在する。そのような効力があるなら、何としてでも核兵器が欲しいと考える国が出てきても不思議ではない。(中略)たとえ一発でもよい、核爆弾が欲しいと考える。(中略)このような国は、核兵器の入手に手段を選ばない。国家的最優先事項だからであり、いくら高くても、また開発にいくら金がかかっても、核兵器保有に努力する」

まさに昨今話題の北朝鮮にピタリと当てはまる話であろう。

「近代的軍隊の編制の特徴を一言で言えば、『ヒーローあるいはヒロインのいらない組織』である。映画や小説で見られるような、ずば抜けた才能を持った一人、または少数の人間が大活躍して戦争を勝利に導く話は人を引き付けるが、軍隊の組織としてはそのような人間に頼らねば勝てないようではだめである。(中略)軍隊はどんな人間がやられても、戦闘力に急速な衰えがないものでなければならない。したがって近代式軍隊ではむしろ、特定個人の人間的資質を無視する傾向が強い」

著者が単なる兵器オタクではなく、戦史、戦争の思想をちゃんとふまえ、それを人に説明できる能力を持ち合わせた論者だとわかる。その辺の三文「軍事評論家」と著者とを分かつ一線である。

さらりと1〜2時間で読めて、楽しめて、実になる有益な本。お勧めしたい。国際関係のリアリズム理論を学ぶにも適している。03/9/11

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