『詭弁論理学』 野崎昭弘

中公新書 1976 通読 新書 新書 C+ \660 *****図書館 03/8/28

論理学という学問に私は興味を持っている。例えばこういうサイトを、私は面白く読むことが出来る。偶然見つけただけだが、久々のヒットだった。だが困ったことに、この興味は持続しないのである。何故か、論理学の本は、一般向けは物足りなく、専門家向けは退屈なのである。話題が高度になるにつれ、論理式だらけの文章となり、ほとんど現実との関わりを持たない電波的会話になっていってしまう。かといって、初心者向けの書物というものは、よくあるパラドックスを面白おかしく紹介して、自己言及だ、選言的名法だ、ともっともらしく解説するだけで深みがない、物足りない。

Amazon.comの読者レビューもいい点で、そこを突破してくれることを期待して手に取ったが、はずれ。ただの一般書でした。冒頭かなりのページを、卑近な例を持ち出して読者に近づこうとしている努力は認めるが、ならば『詭弁論理学』とかいう生硬なタイトルは如何なものか。隣の部屋の騒音がどうの、騒ぐ子供がどうの、卑近すぎて引く。中盤からようやく論理学の解説になっていくが、ここで取り上げられる事例は私がすでにネットで知ったことばかりだった。例えば嘘つきのパラドックス、死刑囚のパラドックス、等々。そうしたことをだらだらと話すだけで問題意識がないのだ。前述のサイトには問題意識がある。これがこうだとしたらあれはどうなるのか?と考える講義になっている。この本にはそれがない。著者の強弁詭弁のあり方など些細な問題だ。我々の使っている言葉、理屈にもっと迫ってほしい。

まあ罵倒する程悪い本じゃないとは思う。ただ、私の求めるレベルとは全く違っていたため辛い評価とならざるをえない。もう本自体が古すぎるのかもしれない。すでにこの本にあることは目新しくない、というかこのレベルの話はネットで簡単に読める。扱うことが古くても、さっきのサイトを見れば分かるように、ヒュームやライプニッツには新鮮な感動を覚えることも出来るはずだ。それはけっしてわかりにくくもなく、重要でないわけでもない。そういう語り手が、象牙の塔から地上の世界へ降りてきてくれることを望む。

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