『コンサルティングの秘密-技術アドバイスの人間学』 G・M・ワインバーグ 木村泉訳

共立出版 1990(原著1985) 通読 A5 ソフトカバー A \2400 A区立図書館 2004/9/18

ダイヤモンド社の本やら、中谷彰宏の本やらと一緒にしてもらっちゃ困る。役にも立たない心がけを並べてあるだけの本とはわけが違うのだ。人間洞察という意味では心理学、コンサル倫理という意味では哲学に接近する良書。

・ルウディーのルタパガ法則:第一番目の問題を取り除くと、第二番が昇進する。

・タイタニック効果:惨事はあり得ないという考えは、しばしば考えられない惨事を引き起こす。

・合理的であるな、妥当であれ

・自分は何でも知っていると思っている人ほどだましやすいものはない。

・逆転ワインバーグの法則:たいていのとき、世界のたいていの場所では、人がどんなに頑張っても、目立ったことは何も起こらない。ときにより、ところによっては、目立った変化が起こることもある--特に人がそのためにがんばっていないときには。

これら箴言と中谷彰宏の言葉がどう違うか。この著者は心構えや気の持ちようについて語っているのではないのだ。著者は世界を叙述している。彼の世界観を述べているのである。だから私は、彼の皮肉っぽい法則の中に、宗教や哲学に類するものを見いだす。それが顕著に表れるのが、す。それが顕著に表れるのが、11章12章の、お金にまつわる話題である。著者はコンサルタントが自分につける値段について説く。

・彼らはたくさん払えば払うほど多く、受取人を愛する。彼らは少なく払えば払うほど少なく、受取人を尊敬する。

・もしその金が必要なら、仕事は引き受けてはならない。

・仕事が気に入ってもらえなかったら、お金をもらってはいけない。

・金銭は通常、価格のもっとも小さい部分である。

皮肉な調子は相変わらずだが、これは倫理の部類に属する話でもあろう。コンサルタントとしてよい仕事をするための指針である。自分を安売りしてはいけないとはよく言われる。だがその理由がつまらないプライドのせいだったりする。そんなことではないのだ。全てはお互いにとってよい仕事のため--プロテスタンティズムである。逆転ワインバーグの法則はペシミズムだろうか、ニヒリズムだろうか。否、「こんなに頑張っているのに何も変わらない、他の奴らが無能だからだ」という不毛かつ不適当な結論に達することを抑止し、それを癒す言葉であると私は思う。

報酬はその人の尺度であり適正に決められなければならないが、著者はより多く稼ぐコンサルタントが優れたコンサルタントであるとは決して言わないし、言外にもほのめかさない。「金のために」仕事をすることさえ戒めているくらいだから。暴走する資本主義や自由主義をこれまでとどめてきたのは、やはりこうした倫理ではなかったかと思う。

訳は平易でよい。リズムによって読んでいける。ただ、時々なぞなぞのような状況説明にとまどったり、アメリカ人にとっては常識であっても日本人にとってはそうではない固有名詞などが散見され、これらには訳注が欲しかったところだ。表紙は地味かつダサイ。だいぶ損をしているぞ。何か専門書のような趣だもの。

コンサルタントに限らず、全ての社会人必読の書。社会人の修養の書。

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