『ペスト大流行』 村上陽一郎

岩波新書 1983 通読 新書 新書 B \430 *****図書館 04/1/10

面白いがちょっと物足りなさが残る。ペストが大流行して、おびただしい死者を出し、医学が無力だったこと以外どうだったのか、があまり書かれていないからだろう。「ここでは詳しく立ち入る暇はないけれども、キリスト教社会が基本的に、占星術や錬金術を非合理、非科学的として、厳しく拒斥し続けていたことは、記憶されなければならない」 いやあ、立ち入って欲しかったなあw

以下一部の要約。

西洋医学の発端となった要素の一つヒポクラテス医学は、体に四種類の体液があり、この平行が崩れることで病が発生すると考えられていた。しかし当然ペストはそれだけでは説明し得ず、新しい説が生まれてくることになる。空気感染説、大気の腐敗説、地震説etc...イスラム世界では、感染と隔離による効果を明確に確立する一方、原理的問題には遡及しようとしなかったのに対し、西方ラテン世界では、感染論が思弁的な段階にとどまる。

ペストの流行は荘園制度の変化に一定の役割を果たした。荘園領主は減少する農村人口の不足により、労賃は高騰を続け、土地を農民に賃貸しという名で下げ渡す方法をとった。こうして転がり始めた農村の中世的構造の崩壊は、農民運動の激化を招いた。ex)ワット・タイラーの乱 あるいは学者の大量死が、知的体系の変化を強いる。人間のモビリティ(可動性)が高まっていく。13世紀に確立された中世的体制に対する反逆は、一世紀半後のルターの宗教改革につながっていく。

というように興味深いことは多々書いてあるが、暗示にとどまってしまう。新書=入門書というような位置づけであったらば、まあよいのかもしれない。もっと知りたい、という気持ちを起こさせる本ではある。

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