『兵士を見よ』 杉山隆男

新潮社 1998 通読 A5 ハードカバー A ¥2200 A*****図書館 04/5/5

1.対戦闘機戦闘訓練 2.「実践」 3.生と死と 4.選ばれし者 5.エピローグ

『兵士に聞け』の続編。前作とは違って、まるまる一冊、航空自衛隊パイロットに関する話でまとめられている。

戦闘機パイロットという異常な世界。同時にお金では決して買えない特権を有するエリート集団。それ故のパイロットの自負。あまりにも苛酷な戦闘機搭乗の任務は、パイロットとしての定年を早め、スポーツ選手と似たように、戦闘機を降りた後の人生というものが、パイロットに重くのしかかる。意に染まぬデスクワークに移るか、民間航空会社のパイロットとなるか。前者より後者の方が飛行機乗りとしていいように見えるが、そうとも限らない。民間パイロットは腕を磨く必要がない。事故さえ起こさなければいい。「もっとうまくなりたい」などという観念は民間パイロットに求められていないどころか、禁じられてさえいる。

なぜ戦闘機に乗るか、本書でその究極的な答えは、「一人で空を飛べる」ということに集約されている。結局同じ飛行機乗りでも、民間パイロットは後ろに乗客を乗せていて、乗客こそが最優先であり、その意味でバスの運転手とそう異なるものではない。百億の飛行機を一人で操る快感、特権。技量を高めていく、やりがい。

自衛隊が戦わない軍隊であり、すなわち「死」から遠い存在である、という考えも本書で改められた。飛行機事故で命を落とすパイロットは決して少なくないのだ。後悔、罪の意識はパイロットに限られず、整備クルー達も苦悶と不安におびえている。その意味でもこの世界は、異常な世界。

前作より統一感があり、テーマが絞られている分、がっちり読み応えがある。自衛隊の政治的な問題を離れて、戦闘機乗りとはなんなのか、ということに焦点が絞られている。特に飛行機に憧れがあるわけでもない私でも、空を飛ぶっていいかもしれない、と思わされる。

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