『バナールな現象』  奥泉光 

集英社文庫 1994/3初版 2002/5/25文庫第一刷 通読 文庫 文庫 A 686 *藤 2003/3/5

小説的技巧を存分に凝らした読み応えたっぷりの小説。前半は大学非常勤講師の日常が延々書かれているが、それほど退屈せずに読めるのは随所に衒学趣味的なエピソードが会話として現れるのもさることながら、やはり奥泉の筆力というべきだろう。後半一気に物語は展開し、葦と百合同様に真実が分からなくなっていく。日記の改ざんが主人公の人生を変えていく。小説として楽しいだけではなく、モーセのトーラー(律法)の話、ユダヤ人の捕虜の扱い--まず殴る、モーセの虐殺--相手の人格を認めた上で殺させる、哲学研究者--ニーチェは面白いのだが、意地でも面白くなく読む。本編とはそれほど絡んでこないが、にもかかわらず小説を豊かにしている。

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