『FOR BEGINNERSシリーズ 大杉栄』 竹中労・文 貝原浩・絵 

現代書館 1985 流し読み A5 ソフトカバー C \950 A区立図書館 04/08/15

絵がいい。始めに絵ありき、絵がレイアウトを決定しているので、段組が滅茶苦茶で文章が読みにくい。というか読ませる気があるのかどうかがそもそも疑問。まあ著者は他にも大杉栄に関する著書があるはずだから、これはこれでいいのかもしれない。

真面目に大正・昭和史を学びたい、大杉栄を知りたい、という人には勧めないが、無政府主義、社会主義系統の人から見た大正の雰囲気というのはよく出ている。この史観が正史になることはあり得ない。でも、社会主義共産主義華やかなりし頃、彼らの目に映った世界はこんなものだったろうか。

苦言を呈すなら、大杉、堀保子、伊藤野枝、神近市子の「四角関係スキャンダル」にページ数を割きすぎである。この本の中心になってしまっている。この四角関係が決着を見た後、この本の大杉は少しアナキスト国際会議に出たりした後、関東大震災までまっしぐら、あっという間に死んでしまう。ちょっとこれは物足りない。大杉栄はこう、もっと凝縮された生を送ったような気がするのだけど。この本の記述は基本的に外面をなぞっているだけだから、余計そう感じる。自由恋愛が大杉の本質なのか。

罪をかぶった形の甘粕正彦に関する記述が一番面白い。甘粕は帝国の責を一身に担う役割を果たしたと著者は見る。大正15年甘粕正彦出獄。昭和2年官費でパリ遊学。5年満州へ。7年満州建国、国務院民生部警務長官。8年官職を退き大東公司設立。12年満州共和会に復帰。13年外交使節団事務総長としてヨーロッパへ、事実上の特命大使。同年満州映画協会理事。・・・この出獄後の経歴を著者は国家の甘粕への論功行賞と捉える。甘粕は満映で左翼の転向者にも門戸を開放。20年8月20日服毒自殺。一級のミステリーだな、こりゃ。

ところでさっきのリンクで恐ろしいことに気づいたのだが、アナーキストに関するこの本が「全国学校図書館協議会選定図書」になっている。あなおそろしや。学校で教えられるアナーキズム。学級崩壊万歳!テロリズム万歳!自由恋愛(=不純異性交遊)OK!てなことになるんじゃないかと思うんですが。

戻る ジャンル別分類へ戻る
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送