『青木雄二のナニワ資本論』 青木雄二

朝日新聞社 1999 流し読み B6 ソフトカバー C \1200 *****図書館 03/12/13

『ナニワ金融道』の著者のマルクス主義経済学?著者の対談本を以前読んだことがあって、とりあえず「資本家が悪い」ばかりでしょうもない本で、この人は物語を書いていてこそ輝くのだな、と感じたことがある。その対談本よりは数段まともな本に仕上がっているものの、そうした感は拭えない。書かれていることで最も輝くのは、著者が直接に体験したことなのだ。マルキシズムの解説をしてみたり、政治の腐敗に憤ってみたり、そんなことは著者でなくてもいい。ただし、自民党の本質が「自由と民主」ではなく「資本家擁護」にある、という著者の表現は大切。これは日本人全体が知っていていいはずの事柄である。ただ、貧民がこれに「だまされて」自民党を支持している、というような見解となるとさすがに浅はかではなかろうか。著者がマルキシストなのはいいとしても、今更旧左翼と同じ轍を踏む必要もないように思う。

まあ万事この調子なので、肩肘張って気合いを入れて読むとすかされる。話半分に聞くという態度が正しい。彼の実体験に基づく話は面白いし、迫力もある。まともな担保を持っているにもかかわらず、銀行が金を貸してくれず、著者に泣きついてくる者の話とか。「貸し渋り」という事象がどういうことか、テレビのインタビューやら取材やらではさっぱりわからなかったのが、青木雄二の書く話によってわかった気がする。経営が苦しい中小企業に金が回らない、それはまあ銀行の経営からいってそういうものかとも思うが、まともな担保があっても金を貸さないとなるとこれは異常事態で、「貸し渋り」と表現されるのもわかるのである。

『ナニワ金融道』を読まずに、これだけ読むというのもナンセンス。あらゆる点で、『ナニワ金融道』の延長線上だからである。『ナニワ金融道』のベースがこれだというのは、順序が逆に思える。彼の面白さは実際の出来事を語ったり、脚色したり、物語を作ったり、というところにある。物語の面白さを作り出す中で、つまらない理論は排斥されていくのだろう。それが正解である。

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