『奇妙な経済学を語る人々』 原田泰

日本経済新聞社 2003 通読 A5 ハードカバー A 1500 A区立図書館 2004/7/10

数式は一切出てこないので安心して読める。著者はもちろん経済学の話をしているのだが、社会学や歴史学の視点からも発言があり、説得力に富む。

著者は言う、「中国が少しでもまともな経済政策をとればある程度繁栄するのは当たり前」「中国と日本の生産物で競合するものは少なく、中国が豊かになることは日本にとって脅威ではない」「人口減少で日本の将来は暗くならない」「専業主婦のいる家庭は何も伝統的な家族ではなく、共働きは推奨されるべき」「デフレを終わらせるためには札を刷ればよい」などなど。

どれも頷ける議論であるが、本書では何故そうならないかについても考察。なんと日本がデフレから脱却し、金利が上昇すると困る連中がいる。それは例えば1%以下の10年物国債ばかりを持っている「普通でない」銀行。こうした銀行は名目金利の上昇から来る国債価格の下落によって損失を被る。ひょっとしてこんな連中のために日本は不況であり続けている???

圧巻の議論は、児童扶養履行強制制度である。女性が子供を産まなくなったのは、子供を産み育てるコストが高くなったからである。ここで言うコストとは、子供の養育・教育費のことだけではなく、女性が退職することによって失われる収入も含み、それはおよそ一億円だと著者は算出する。さらにそれに加えて、女性の家庭内の地位が低く、女性が結婚に魅力を感じないから子供が生まれない。そこで、女性の家庭内の地位を高めるために、離婚時の女性の経済水準を高めるべきである。アメリカでは養育費の金額は州政府が決定し、強制的に給与等から天引きされる。この児童扶養履行強制制度によって、女性の離婚時の経済保障がなされ、結果、女性の家庭内の地位向上に繋がる。そうなれば、結婚に魅力を感じる女性も増えるはずである。また、女性の未婚率が高まることは男性の未婚率が高まることと同じであり、この制度は結婚したい男性にとってもメリットがある。そしてなんと言ってもこの制度のメリットは、財政コストがかからない点である。

いや、おみそれしやした。まさに複眼的思考。伊達に官僚をやってきていない、という感じである。

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